大阪市内より50代の男性、大学講師。主訴は「7年ほど前にやり替えた前歯のブリッジが根っ子から割れてしまった。何度か腫れて、強く噛みしめると違和感がある。かかりつけ医では、『割れた歯を抜歯した後、インプラントを入れると完成まで2年は要る。費用もたった1本で80万くらいは必要。また、その隣の元々歯のない所は、骨が退化して薄くなっているのでインプラントは無理。貴方の場合は、6連結のブリッジ(60万)か金具のない入れ歯(30万)しかない』と言われた。」でした。
Dr:「確かにブリッジが原因で、歯根にヒビが入ったり割れたり、根の先に膿が出来たり、歯がグラグラするなど、拝見しない日が無いくらいブリッジのトラブルは後を絶ちません。
当院は、骨の再生に特化した施術と経験がありますので、如何なる骨の状態であっても良い結果を出せています。
再び大型ブリッジを行なって、この先今より前歯がなくなってしまうことを考えると、私はインプラント治療の選択をされても良いのかなと思います。
患者様は6連結のブリッジを避け、2本のインプラントを選択されました。
歯肉をはく離すると、歯根は2分折されていました。同時に周囲の骨も大きく衰退していました。
また隣の歯のない部分の骨は、かなり菲薄していましたので骨幅を2倍に増幅させたのち、インプラントを
移植することにしました。
折れた根を抜歯すると、根の先には大きな腫瘍が強固に付着していました。
かなり以前から、噛み合わせによるブリッジのトラブルが生じていたことが伺えます。
〈向かって左〉
インプラントの植立後、骨の不足している所には、自己血液を用いた骨の再生治療でバックアップします。
〈向かって右〉
骨の厚みを2倍に増幅させる「骨幅拡大手術(スプリットクレスト法)」を行なってからインプラントを移植した後、骨の厚みを確実にするために骨の再生治療も同時に行いました。
使用インプラント:ノーベルバイオケア社製 アクティブ直径3.5㎜ × 長さ13㎜ と 直径4.3㎜ × 長さ11.5㎜
動物由来ではない人工骨(βーtcp)と患者様自身の自家骨を融合させた骨を用いてインプラント移植した周囲穴部に補填します。
施術より2ヶ月後の状態です。これより、仮の歯を入れるための型取りを行います。
施術から3ヶ月後の状態です。しばらくの期間、前歯の歯肉の左右均等を目指し、仮歯を調節して、歯肉に圧を加減させながら高さをコントロールしていきます。
施術から5ヶ月後。
本日無事に仮歯からセラミックの歯に入れ替えて、完成しました。
〈患者様の感想〉
・ブリッジを入れててこんな目に遭ったのに、またブリッジにしていいものか?
かかりつけの先生への返事に困っていたところに、痛みと腫れが再発してきたので正直焦っていました。HPで最新のインプラント治療を探しまくりました。
インターネットのない時代なら、おそらく私は言われるがままにブリッジや入れ歯をされていて、老後は総入れ歯になっていた可能性もあります。
ブリッジには昔からコンプレックスがあったので、全てが改善されて本当に感謝しています。
今は1日に何回もインプラントの掃除を行なっています。
〈Dr〉前歯のインプラントは正直難しいです。
良い条件の骨質状態でインプラントの施術を行う事などまずありません。
歯肉と共に骨も衰退している。
骨の厚みが5㎜しかない。
ブルーベリーサイズの骨の陥没が移植予定の中間地点にある。
などなど様々な難所が必ず待ち受けています。
与えられた骨にインプラントを上手く移植して、骨としっかり固定させるのは、至難の技です。
インプラントを移植した位置が、出来上がった前歯の裏側の中心にネジ穴がくるような設計でなければなりません。
結果が全ての世界ですので、上手く噛めていると喜んでもらえて、私も嬉しい限りです。
参考:
静脈麻酔鎮静法は無料。
人工骨の増幅¥35,000×2、
インプラント¥350,000×2,
手術代¥15,000、
仮歯¥10,000×2
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