遠方より30代の女性。主訴は「噛むと痛い。歯茎も膨れて赤く腫れている。かかりつけ医院でセラミックの歯を入れてまだ間もないのに『高さを落とす』治療だけが続いた。最後は『歯周病だから抜歯』と言われたが納得いかない。出来れば残したいので、精査をお願いします。」とセカンドオピニオン的な内容でした。
通常のレントゲンだけでは分かりにくいので、CT撮影をして患部をチェックしました。左図の画像より、5番目の歯は根の先まで縦長に大きく骨がえぐれて、根が丸見え状態です。これは歯周病が原因ではなく、歯根に亀裂やヒビが入ると、周囲の骨が無くなり、そこに膿みが溜まることがあります。残念ですが、私でも同じく『抜歯』になります。
歯を抜いた所は、1.入れ歯 2.ブリッジ 3.インプラントからの選択になります。ご検討ください。
すべてを理解して頂き、当院で別日に抜歯を行うことになりました。ただし、この患者様はインプラント治療を視野に入れておられるので、抜歯と同時に、無くなった骨を回復させる施術を行いました。
点滴中、採取した血液の試験管を遠心分離機にかけることにより、再生力の高い細胞組織の塊(CGF:黄色のフィブリノーゲン)が出来上がります。これを再び体内に戻して、骨や歯茎の再生を促進させます。結果、ボリュームのある歯茎を取り戻せます。
粉々の人工骨(β-TCP)もフィブリノーゲンと混ぜれば一塊となり、骨の再生力を高めることが可能になります。
上記の治療後、さらに上(抜歯窩に添加した人工骨)から、黄色のフィブリノーゲンの塊を乗せていきます。
これとは別に、黄色のフィブリノーゲンの塊(CGF)を圧接すると、即座に「口の中の皮」に変成します。出来た皮は、歯を抜いた所に縫い合わせ、蓋の役割をします。
左図は、皮を縫い合わせる直前の状態です。このように、「CT」「点滴」「採血」「遠心分離機」「フィブリノーゲン」「動物由来ではない人工骨」を駆使して、インプラント治療への準備が整いました。半年後、同部の成熟が楽しみです。お疲れ様でした。
元気・やる気・Dr.鈴木のコラム
2017/2/11
点滴を使って不安を除く骨作り&インプラント術